Venezia

ヴェネチア

世界中を探しても、これほど個性的な町は他に存在しないだろう。言うまでもなく水の都としてあまりにも有名なヴェネチアだが、実際に訪れてみるとやはりその際立った個性に圧倒される。何度もテレビや映画でその街並みを見ているはずだが、やはり実際に足を踏み入れた時の感動はひとしおだ。

 車が入ることができないヴェネチアの町は、細い小道と水路がめぐらされ、徒歩と船しか交通手段がない。およそ13世紀の長きに渡り、この特殊な環境の中でヴェネチア共和国として君臨し、独自の発展を遂げて来た訳だから、他の町と全く違った文化が醸造されたのも当然なのかも知れない。一度も破壊される事無く、連綿と時を重ねてきた美しい街並みは、何処を切り取っても絵になる風景が連なっていて、その中に絵画や建築、工芸品、その他様々な奥深い文化が根付いているのだから、世界中からものすごい数の観光客が押し寄せるのも当然である。

 荘厳な教会、きらびやかな邸宅、美しい路地、数々の博物館、たくさんのブティックやレストラン、素敵なアトリエ、数え切れないほどの土産物屋・・・ヴェネチアを歩いていると、歴史が作り上げた文化の巨大なテーマパークのように思えてくる。そして、迷路のような路地を歩いていると、必ず迷う。最初のうちは地図とにらめっこをしながら歩いていたが、それでもほとんど分からないので、そのうち適当に歩くようになる。ぐるぐる同じ道を周ってしまうこともあるが、いつの間にか、何となく目的地に着いていたりする。そして、道の途中でいくつものハッとするような美しい景色や素敵なお店に出会う。歩くしかない町だけれど、歩くことが、そして迷う事すらとても楽しい。

いろいろな面で観光地化し過ぎている面は否めないが、やはり一生に一度は必ず訪れるべき素晴らしい町である。